2012年6月28日木曜日

孤高の画家・兵藤和夫

孤高の画家・兵藤和夫が6月23日(土)午後3時、老衰のため永眠しました。享年92。

「樹と道」 油彩 20号


横浜山手の丘裏中腹に「シイの樹」がある。この樹に初めて向き合ったのは昭和16年、それから20年毎にこの樹を描いてきた。当時は2本あったのだが、空爆で1本が倒され、戦禍を経た生き残りの情をこの樹に抱いたのが描き続けた動機かもしれない。

「巴里の屋根」油彩 10号


美術ジャーナル誌に寄せた文に「・・・・敗戦直後は、まして若い無所属画家など、生きるには至難な時でした。だが然し、独立展会場から自作をおろし、みずから肩書きを棄て、更に地方名士への道も閉ざすべく地元美術界とも絶ち、自分の作品内容以外、自己を飾るもの皆棄てて、作品のみで勝負する状態に自らを突き遣ることは魅力でした。・・・・・・

「港・フランス山裏から古きヨコハマ風景」油彩 6号


・・・・この状況で生き抜くには、極貧への覚悟と、並の作家の十数倍の努力精進と桁違いの作品を描かねばなりません。私は人と違う、必ず或る物が内奥に在る。遣り抜ける自信と傲岸さがありました。私は至難の道を選ぶことにしたのです。若さとは良いものです。20歳も終わり近くのことです。」 


「葡萄篭」 油彩 20号


仏徒の求道、武士の道にも重なる作画の姿勢は作家精神である。もはやこのような骨太の作品を描く作家は兵藤和夫の後には存在しないであろう。
2001年に横浜文化賞を受賞。